日本は給料の安い国。優秀な人はもう日本を選ばない。

先日、こんな記事を目にする機会があった。「この給料じゃ生活できない!」アジアの優秀人材はもう日本を選ばない
 

確かに、日本は賃金という面では中国都市部やシンガポール、香港を下回り、ASEAN諸国との格差も急速に縮まってきている。
 

しかし、多くの日本人は、日本国内の企業間の賃金格差(大手商社の給与は年収1千万等)には敏感だが、国レベルの賃金格差にはめっぽう疎い。
 

自分も日本に一時帰国して、大学時代の友人達と会うと「香港で働いてる? 所詮、アジアレベルの給与でしょ?」といった趣旨の発言をされることもある。
 

大学を出たものさえ、この様な発言をするのだから、未だに多くの日本人の頭の中は、昭和の「Japan as No.1」のままと思わざるを得ない。
 

今回は、以前書いた日本は物価の安い国。気づいていないのは日本人だけ。の続編として、日本の給与について書いていこうと思う。

日本は給与は低い国?その理由とは?


自分はシンガポールと香港での就業経験があるが、現地の人々の間では、日系企業は長時間労働、劣悪な労働環境に加えて賃金が安いということで、就職先としては超絶不人気という事実がある。
 

だが残念なことに、多くの日本の企業、海外の日系現地法人さえ、その事実に気づいていない場合が多い。
 

確かにひと昔前までは、日系企業と言えば、給与が高く、特にアジアの人々から羨望の眼差しで見られた。
 

誰もが憧れる国、日本だったのだ。
 

しかし、現在ではアジアに住む人々、特に若い人達は、こぞってより給与の高い欧米企業、もしくは中国資本の企業に集まり、日本の企業は敬遠されている。
 

日本を下回る経済規模のイギリスやドイツ、アジアで言えば中国系企業の方が、日本より給与が高く、日本の企業は給与が低いというイメージを持たれてしまっているのだ。
 

では、なぜ日本企業の給与は、ここまで相対的に下がってしまったのだろうか?
 

理由は「日本の世界における地位の変化」と「時代に合わない雇用形態」の2つに起因する。

相対的に裕福ではなくなってきている日本

日本にいるとテレビなどのメディアを通して、頻繁に聞く言葉の一つに「日本はGDP世界第3位の経済大国」というものがある(自分が子供の頃は第2位というのをよく聞かされたが・・・)。
 

GDP(国内総生産)とは簡単に言えば「1年間にその国がどれだけ儲けたか?」を表す指標のことだ。
 

つまり、その国で働く人が多ければ多いほど、その数値は積み上がる。
 

今後、GDPは中国とインドが2強となり、世界を牽引していくとされるが、それはこの2カ国が世界トップ2のリッチな国になるという意味ではなく、14億という飛び抜けた人口がGDPを押し上げていくという意味なのである。

世界の人口ベスト10。中国とインドは飛び抜けている。
出典:世界経済のネタ帳

 

日本も1.2億人と世界の中で10番目の人口を誇り、この人口の多さが「GDP世界第3位の経済大国」足らしめる所以でもあるのだ。
 

従業員の多い企業が、必ずしも高い給与ではないのと同じ理屈で、「GDPが大きい=その国の人がお金持ち」となるわけではない。
 

では、その国の人の豊かさを知るにはどうすれば良いのだろうか?
 

その指標の1つに「1人当たりのGDP」というものがある。
 

その国のGDPを人口で割ったもので、GDPが「1年間にその国がどれだけ儲けたか?」なのに対して、「1人当たりGDP」は「1年間にその国の人、1人当たりがどれだけ儲けたか?」を示す。
 

香港やシンガポールではこの指標を頻繁に目にすることがあるが、日本では「GDP」ばかりが取り上げられ、大学で経済を専攻したり、ビジネス書を読まない限り「1人当たりのGDP」という言葉を聞く機会はあまりない。
 

それはなぜか?
 

それは「1人当たりのGDP」が日本にとって不都合な真実を表すからだ。
 

以下が日本の「1人当たりのGDP」の国際順位の推移になる。

日本の順位は右肩下がりに対して、中国は右肩上がりだ。
出典:世界経済のネタ帳(IMF統計)

 

日本の順位は2000年の2位から坂を転げ落ちる様に、右肩下がりとなっている。一方、中国は都市部は豊かになったものの、まだ農村部を中心に貧富の差が大きく、順位自体は低いが急激な追い上げを見せている。
 

人口減少に、低い経済成長率。上がらない給料に低迷する消費。
 

日本の国際競争力は、この20年で大きく低下しているのだ。

時代に合わない日本人の働き方と雇用形態


そして、日本の給与が安いのは、その給与体系も大きく影響している。
 

海外では本人の役割や結果で給与が決定するが、日本では「その会社に何年いるか?」という在籍年数で決定される。
 

そのため、会社の業績に貢献する結果を出しても「在籍年数が短い」というだけで、見合った給与がもらえず、業務中に暇そうに新聞を読んでるオジサンが「在籍年数が長い」というだけで、給与が高いといったことが起こる。
 

さらに、在籍年数を評価するシステムから、「転職は年収ダウン」という世界から見たら「非常識な常識」も生まれてしまっている。
 

会社に長く在籍しているが、何もしていないオジサン達にもお金が集まり、本当に優秀な人材に見合った給与が支給されない。これが今の日本の給与システムなのだ。
 

近場のアジアを見渡してみると、香港やシンガポール、中国の都市部では新卒でも30万円以上の給与を支払う会社が山ほどある。

ファーウェイの初任給月40万円が話題「普通に就職したい」「優秀な人は流れていっちゃう」

これらの国々では、フィンテックや人工知能の分野で、新卒に年収1千万円を用意する会社もあるほどだ。
 

優秀な若い人材を高額な給与で囲うアジアの国々に対して、20年以上も手取り20万以下で囲おうとする日本。
 

「在籍年数を評価し、新卒は同額からのスタート」というシステムは、非グローバルで人口増加の時代背景に、年功序列と同質性が好きな日本人の国民性に合致したからこそ機能していたものだ。
 

しかし、時代は流れ、グローバル化、少子高齢化、外国人労働者の増加と日本を取り巻く状況は大きく変わった。
 

「空気」を読んでも「時代」読まず、新卒一括採用を含め給与体系を見直すことを怠ったツケが、今、この様に欧米の国々は元より、アジアの国々からも給与が安いと言われるまでになってしまったのだ。

それでも日本に外国人が働きに来る理由

給与が低く、優秀な外国人は来ないと言ったが、実際、日本での外国人労働者は毎年増加している。
 

 

しかし、その多くは留学生や技能実習生など、安価な労働力としての一時事的な受け入れにすぎない。
 

その留学生と技能自習生について話をしよう。
 

まず日本に来る留学生というのは、大きく分けて以下の2通りのタイプがある。

・漫画やアニメをはじめとした日本の文化に興味がある人達
・自国で大学に入れなかった人達
 

ありがたいことに、日本の文化やアニメが好きで留学して来る外国人というのは一定数いる。では、自国で大学に入れなかったから日本に来る留学生とは、一体どの様な人たちだろう?
 

自分が新卒で入社した会社には、留学生として来日し、そのまま日本に就職した同期が数人程いた。
 

そんな彼らに、何故日本の大学に進学したのかを聞いたことがある。
 

その答えは「自分の成績では自国の大学に入れない。だから日本の大学に来た」というものだった。
 

さらに「自分は自国では甘えていると思われている」とさえ言っている。
 
確かに中国の大学は競争が激しいし、シンガポールや香港の大学は数が少ない上に世界トップクラスだ。
 

自国の大学に入学できないから、仕方なく日本に入学する。そんなことを言う彼らは、東工大や早稲田と言った日本ではエリートとされる大学出身なのだ。
 

QSアジア大学ランキングより
日本は東京大学の13位が最高

 

次に技能実習生だが、彼らの多くは、中国農村部か東南アジア出身だ。しかし、自国と賃金のギャップが縮小している中国からの技能自習生は減り続け、代わりにベトナムが39%を占めるまでに増えてきている。

nippon.comより

 

しかし、人口1億を超え、年率6%以上の経済成長率を遂げているベトナムも、早晩、中国同様に日本を選ぶメリットがなくなって来るだろう。
 

留学生にしろ、技能自習生にしろ、言い方は悪いが、彼らは国際的にはエリートではない。
 

日本人の雇用を守るために、安価な労働力として日本留学生や技能実習生のみを受け入れる。
 

ただでさえ、給与が安く、競争力が下がっている日本がこのような政策で本当に良いのだろうか?
 

これはJリーグやプロ野球に例えると、日本の選手の出場機会を増やすために、二流の外国人プレーヤを助っ人として連れてきているようなものだ。
 

これでは国としての競争力が上がる訳がない。
 

香港やシンガポールは国際競争力を高めるために、優秀な外国人の獲得を国を挙げて取り組んでいる。
 

例えば、ここ香港では「優秀人材計画」と題して、欲しい分野の人材(資産管理、フィンテック、科学技術等)を世界に向けて公表しており、その分野の人材は就職先が見つかる前に香港への居住が認められるなど、様々な優遇措置がある。
 

中国もビザを厳格化し、優秀な外国人のみを選別するような流れになってきている。
 

ただでさえ、国際競争力が下がっているに、積極的に海外の優秀な人材を取りに行く姿勢を見せず、一時凌ぎの安価な労働力ばかりを求める日本。
 

このままでは、競争力のある人材は元より、それ以外のすべての外国人から見捨てられる未来がすぐに来てしまうだろう。

最後に

実は、日本はこれまでにも労働不足を補うために、専門的・技術的な知識やスキルを持つ外国人は積極的に受け入れるというスタンスを取っていた。
 

しかし、2018年6月に公表した「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」では、これらに当てはまらない非高度人材に対しても受け入れを表明したのだ。
 

これは裏を返せば、国の競争力を挙げるような優秀な人材が、思うように来てくれなかったということにもなる。
 

では、どのようにすれば海外の優秀な人材が日本に来てくれるのだろうか?
 

それには日本人が見直さなければならない緊急の課題が2つある。

1.受け入れてやってもいいよという上から目線の考えを見直す。
2.優秀な人材にはそれに見合った報酬
 

多くの日本人は「先進国・日本」というブランドが、未だに通用し「日本は世界から憧れる国」と思っている。
 

しかし、これまでにも述べたように日本の競争力、優位性はどんどん下がっている。さらに少子高齢化による労働人口の減少により、社会を維持するためには、日本はもう「選べる立場」ではないのだ。
 

海外の優秀な人材を積極的に呼び込む施策を考え、それに見合った報酬を払う。そうでなければ、選り好みしている日本は、完全に「孤立」した存在になるだろう。

日本は物価の安い国。気づいていないのは日本人だけ。

2018.01.01

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